もくじ
はじめに
絵画技法にはたくさんの種類があります。技術や絵の旨さに関係なく子供でも楽しめ保育に使える技法もあります。保育に使える技法はこちら。ここでは油絵の技法を中心に絵画技法用語について説明していきます。
鉛筆を使う人物のデッサンについてはこちら。
空間を表現するための遠近法、空気の層を表現するスカンブル。
空気や水の透明感を表現するグレーズ、現実の物体のように境界線の無いスフマート。
色彩の鮮やかさがあり経年劣化の無いテンペラ、広い空間を均一に塗ることが出来る平塗り、重厚感のあるマチエールを作れるハッチング。
仕上がりのハイライトや頬の赤みを表現出来るドライブラシ、明暗や立体感を捉えやすいグリザイユ。
フォルムや光と空間を捉えやすいカマイユ、ウェットオンウェットで勢いよく描き上げるアラプリマ、印象を大切に形を描くデフォルマシオン。
あなたに合う表現技法を見つけてみて下さい。
絵画技法遠近法
遠近法とは、我々の目の前に存在する3次元の空間を、2次元である平面上に視覚的に遠近感を表現する方法です。
「遠近法」という語は、狭義においては遠近表現法のうち、平行線の収束を用いた、「線遠近法」を指します。
「線遠近法」は、本来空間が存在しない2次元平面に空間を感じさせるすなわち遠近感をもたらす手法です。
ヒトの奥行知覚は絵や画像といった2次元平面から空間の奥行きを感じることができます。
「線遠近法」は、平行線が奥へ行くにつれ幅が短くなるため、同じ大きさの物でも視点から遠いほど小さいくなります。主に人物に適用する短縮法では、同じ長さでも視点との角度により長さが異なります。
透視図法以外の遠近法として、近くを明確に描き遠くを不明瞭かつ沈んだ彩度で描く空気遠近法があります。
スカンブル技法
スカンブルまたはスカンブリング
不透明・淡色の絵具の薄塗りする技法です。下塗りの色がとぎれとぎれに見えるように、下塗りの色の上から、不透明な色を薄くかけることです。
仕上がりは半透明となります。半透明だと下の層の描き込みなどが完全には消えずにうっすら見えます。
グレーズ技法は透明な絵の具を重ねるテクニックです。スカンブルとよく似た技法ですが、使用する絵の具の透明度が違います。
油彩画ではヴェラチューラやベラトゥーラとも呼びます。
不透明色をごく薄くハッチングでかぶせたり、乾いた柔らかい筆の毛先で、細い刷毛目を軽く引くような手法が含まれます。
霧がかかった風景や空気遠近法に使用します。
グレーズ(グラッシ)
すでに乾いた絵の具層の上に、薄く溶いた透明度の高い油絵絵具を薄く塗る技法です。
油絵具を樹脂性のワニスで溶き、薄く透明な絵具層を何層も重ねて塗っていきます。
グレーズはその薄い膜のことを指す言葉でもあります。透明度が高い絵具は下の色が透き通って見えるので光沢と深みを与えるための伝統的な技法となっています。
この技法は透明技法と呼ばれています。グレーズはグラッシとも呼ばれています。
グレーズには柔らかい筆を使いましょう。
透明技法を試みるときは、色付きの画用液をつくるイメージで絵具を溶き、柔らかい筆で薄く塗り重ねます。
全体に色をつけたいときは、柔らかい布などで刷り込みましょう。
スフマート
薄く解いた絵の具を塗り重ねて、物体の輪郭と周囲の空間との境界線がわからないほどにぼかして描く絵画技法です。
実際の物体や人間の輪郭に線はないことから、物体の輪郭を線ではっきり描かないで、周囲の空間との境界線ををぼかして描く絵画技法です。
空間における物体の存在を現実的に表現するための手法になります。
絵の具が乾いてからまた塗る、という作業を何度も繰り返すため、時間がかかります。
色彩の移り変わりが認識できない程に僅かな色の混合を行います。
「スフマート」(sfumato)は絵画用語で「ぼかした」「蒸発した」という意味のイタリア語です。「煙」を意味するフモ(fumo)という言葉から発生した言語です。
テンペラ技法
テンペラは卵や鑞、カゼインなど乳化作用を持つ物質を固着材として利用する絵具と技法のことです。これで描いた絵画を「テンペラ画」と呼びます。
テンペラは色彩の鮮やかさや細い線を重ねて描く技法に向いています。経年劣化の現れ方が少なく、色彩の鮮やかさが数百年も続きます。
「テンペラ」の語は「混ぜ合わせる」という意味のイタリア語「テンペラーレ」に由来し、画家が顔料と練り合わせ材を混ぜる行為を意味します。
テンペラは乾きが早く丈夫で耐久性に富む絵画層を作り、油彩画よりも明るく鮮やかな色を発します。
油彩画のような黄変・暗変を示さないという特徴があり、経年劣化が少ないため、数百年前に制作された作品が今日でも鮮明な色彩を保っています。
半面、平塗やぼかしの技法には不向きで、線描的な性格を持つ画法です。
平塗り
絵の具を均一に塗る技法です。
塗る面積に合わせて、途中で足りなくならないように、絵の具を多めに作っておきましょう。
溶き油で絵具をゆるめて流動性を持たせて、平筆で塗り広げていきます。画面全体が均質になるよう何度も返しながら塗り進めていきましょう。ムラが出ないように縦と横に交互に塗りましょう。キャンバスの目が残りますが、このわずかな起伏が後の塗り重ねに効果を発揮します。
厚く塗る場合は、豚毛の平筆で厚塗りを行うと筆跡が残ります。筆跡を残したくない場合は柔らかい筆を使いましょう。
ハッチング
ハッチングは複数の平行線を描き込むことで絵に重厚感を与えることができる技法です。絵画や製図について行われる描画法の一種になります。
ハッチングはデッサンの大きな要素の一つでもあります。影や、質感を出したり、空間や感情を表現するために使われます。
ハッチングは「細かい平行線を引く」という意味の英語です。
クロスハッチングは、ハッチングを異なる方向に交差させる技法です。
古くはテンペラ画において顕著に見られる技法です。筆による加圧によって隣接する絵具を混合し、連続した一連の階調を表現できる。
ファン筆を使用しハッチングすると一度に沢山のラインを平行に引くことが出来ます。ハッチングにより良いマチエールを背景に作成することができます。
ドライブラシ
ドライブラシとは絵具をそのままか、硬めに溶いたものを筆につけ支持体に塗り、かすれで表現する技法です。
強い発色と擦り付けた際のかすれた筆触を得ることができます。それらを利用して表現に用いることができます。
硬く溶いた絵の具を支持体に擦り付けると、キャンバスの凹凸の凸の部分にのみ絵の具がついて、かすれた調子がでます。
筆を立ててキャンバスに押しつけたり、筆を寝かせて腹の部分で紙を撫でるように描いていきます。
ドライブラシは乗せた色を筆で引き伸ばしたり、引き伸ばしつつ混ぜ合わせることも可能です。
ハイライトやアクセント、ほほ紅などを入れるのに用います。対象をぼかすことにも使えます。
グリザイユ
白黒で構成する技法です。
グリザイユはフランス語で灰色という意味です。
グリザイユ画法とは、モノクロのみの表現されています。明るさだけを白から黒の多階調のグレースケールで先に陰影を描き、色を後から乗せていく絵画手法のことです。
色よりも先に陰影をつけるため、その上から透明度のある絵具で着色すると立体感や明暗を出しやすくなります。
明暗、色相、彩度を整理して観察し、理解するためにもグリザイユ技法は効果的です。
色相が無く、明暗のみを追って描いていけるので全体の明暗をつかみやすくなります。
元々は油絵などの下描きの技法でしたが、デジタル作画でも利用されています。
特にリアル描写をする際に力を発揮する技法で
す。
カマイユ
カマイユはアンバー、バーントシェンナのような褐色系のセピアで画面構成する有彩単色で描画した技法です。
モノクロやセピアの写真のようにモノトーンの画面になります。
単色の明暗のみで描いた絵画をいうが、金地に描いたものや素描に類するものは除外されるようです。
カマイユ(camaieu)とはフランス語で単色画法のことです。語源は低い起伏を意味するギリシア語のkamaiです。イタリア産の装身具として著名なカメオも同じ語源をもちます。
油画の下層描きにこの技法を応用すると、フォルムと色彩に分業して画面を構築することができます。
カマイユで光と形、空間を表現し、その後で着彩して色彩を表現します。
下層のトーンが上層の色彩に微妙な変化をあたえるので、複雑なニュアンスな色をを出すことができます。
アラ・プリマ
絵の具が乾いていない濡れた状態で、さらに上から色を塗るウェットオンウェットで一気に全体を仕上げる技法。
アラ・プリマは即興性の面白さ、動的な筆致、筆勢、インスピレーション、即時性、を得ることが出来ます。アラ・プリマの筆はとてもスピーディーです。「一気に、一息に」といったニュアンスも、ここから来ます。
デメリットは、望んでいない所で色が混ざってしまう恐れがあることです。
伝統的な油彩の技法は、とても計画的で、職人的な技術と知識も必要とされます。
アラ・プリマは伝統的な技法と対立する位置にあるのではなく、補完し合う要素であるといえます。
油彩の技法を熟知し、それを基盤とした上で、速度のあるアラ・プリマの描法で制作することが重要です。
デフォルマシオン
変形、歪曲。情動、欲望、印象など視覚に従属しえない感情、あるいは作者の個性を表現・強調すべく、あえて見たままの再現描写を離れて著しく歪めて描く方法。
「デフォルメ」という仏語で日本に定着している
形成、構成を意味する「formation」に否定の接頭辞deをつけた「変形」の意味
必ずしも「formation」を否定するものではない。つまり「formation」の内に属する概念であるといえよう。
デフォルマシオンは感情のほか宗教的な主題、枠や空間の意識、作品全体の調和などが再現性より優先されることで生まれる。
作者個人の主観が重視される20世紀以降の美術においては珍しくない手法となっている。
美術史における顕著な例としては、自然らしさや整合性よりも美的感覚を優先して人体のプロポーションを引き伸ばし、ねじれた構成を多用した16世紀のマニエリスムが挙げられる。
まとめ
絵画技法の知識があれば、絵画を観る時に、どんな技法が使われているのかを考察することが出来ます。
また絵画を作成する時にどんな技法を使って描くか選択することができます。
空間を表現したり、空気や水を表現したりするために実際の現実を絵画上に再現するための技法、グレーズやスカンブルやスフマート。
現実の形よりも印象による形を大切にした表現、デフォルマシオン。絵の具の色彩を保ち時間による劣化を防ぐテンペラ技法。
興味が湧いた技法があればどんどん試していって下さい。
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