もくじ
はじめに
春画は、江戸時代を生きる庶民たちの間で流行した性行為の様子などを赤裸々に描いた絵画です。
浮世絵には大きく2種類あります。版元、絵師、彫師、摺師の四者分業で仕上げる 本版画と、絵師が自らの筆で絹や紙に描く肉筆絵で、ほとんどが本版画です。
春画は江戸時代に刊行された浮世絵の4分の1を占めていたとされています。
葛飾北斎は23歳から春画を手掛けていますが、そのほとんどが版画で、肉筆の作品は数点しか見つかっていません。肉筆は80代前後に最も多く描かれています。
葛飾北斎の蛸が女性を襲う春画が有名です余白には絵に関する物語が描かれています。
武家の間では子孫繁栄・武運長久の縁起をかついで嫁入り道具にも使われました。また、お守りとして武士は戦の時には鎧甲を入れる箱の中に春画を入れていました。春画には火災を避ける効力もあるともいわれていました
明治になってアメリカの禁欲的なピューリタン思想により春画は猥雑物と認定されてしまい、日本では春画がタブー視され始めました。
しかし近年では春画の芸術的価値が評価されてきています。2015年に開催された春画展以来、春画は絵画の中でも特に高価買取がおこなわれています。
春画とは
江戸時代を生きる庶民たちの間で流行したという、性行為の様子などを赤裸々に描いたもので美しい絵画です。
江戸時代に刊行された浮世絵の4分の1を占めていました。
春画はかつて武家から庶民まで広く親しまれていました。とくに武家の間では子孫繁栄・武運長久の縁起をかついで嫁入り道具に使われたこともありました。
しかし、その露骨な性描写から、明治期以降 の日本ではアメリカの禁欲的なピューリタン思想により春画は猥雑物と認定されてしまいました。日本では春画がタブー視され始める一方で19世紀の欧米では女性器を露わに描いた芸術はほとんど存在しないので驚かれました。
春画は笑い絵や枕絵、秘画、ワ印とも呼ばれました。冊子状のものは笑本、艶本、好色本、枕草紙といわれます。それほど露骨な描写でない絵は危絵(あぶなえ)と呼ばれます。
蛸と女性の春画
一番有名な春画としては蛸が女性を襲うものがあります。
作者は葛飾北斎で、90歳の時の作品です。
『喜能会之故真通』 に登場する傑作で、世界中で最もよく知られた春画といえます。
余白には「書き入れ」セリフがあり、大蛸と子蛸 の2匹の蛸(たこ)が女性と性交渉を行う物語が描かれています。
蛸とよばれていた床上手な女性が本物の蛸にさらに未経験の性の世界を味合わされるというような話です。興味のある方は古文書解読アプリで読んでみて下さい。
北斎は23歳から春画を手掛けていますが、そのほとんどが版画で、肉筆の作品は数点しか見つかっていません。
浮世絵には大きく2種類あります。版元、絵師、彫師、摺師の四者分業で仕上げる 本版画と、絵師が自らの筆で絹や紙に描く肉筆絵で、ほとんどが本版画です。
北斎は生涯描き続けましたが、精力的に色摺りの春画本を手がけるようになったのは50~60代にかけてです。特に肉筆は80代前後に最も多く描かれています。北斎の春画のほとんどが12枚1組です。
春画の価値
一般的な浮世絵と比べて、春画は流通数が限られているため、値段の幅に開きがあります。 高いものでは1億円以上する場合もありますが、安いものでは豆判というカードのようなミニサイズの春画で、数万円から1万円以下で手に入ります。
『和合扇』という12枚組の作品で、扇子がテーマです。コンパクトなサイズながら繊細な絵柄が描かれています。時代は、文化文政から幕末の頃のもので、彫りや摺りの技巧が見事です。
春画にはたくさんの作者が存在し、期待以上の価格で買取されるものも少なくありません。
春画から遊郭の様子や、日本の庶民文化、江戸時代のエロティシズムがなどがわかります。
春画は近年まで美術史の中では猥雑物として扱われていました。2015年に開催された春画展以来、春画は絵画の中でも特に高価買取がおこなわれています。
鈴木春信の「風流座敷八景」、鳥居清長の「袖の巻」、歌麿の「歌満くら」、北斎の「喜能会之故真通」は絵画買取業者でも高値で買取されています。
春画は、お守りとしての役割がありました。
武士は戦の時には鎧甲を入れる箱の中に春画を入れていました。また、春画には火災を避ける効力があるともいわれます。
古美術商で浮世絵や春画を買うのもおすすめです。
古美術の場合、来歴が保証され、時代を超えてその作品を共有できる安心感があります。
現代アートに数百万出すなら、この骨董を買う方が、安全な投資とも言えるでしょう。
現在は古美術に興味を持って購入するのは一貫して欧米人なのです。
古美術の中心地、京都で評判の古美術商では葛飾北斎の肉筆画など作品が次々に出てきます。それでも一千万円を超えるような歴史に残る名品を買う日本人は稀なのです。
春画の有名な作者たち
葛飾北斎
江戸時代後期に活躍。余白に文字を書きオノマトペの多用された物語を書く。陰毛など細かい描写をする。
『富久寿楚宇』
12枚の組物 画面いっぱいの構図で描かれている。
『つひの雛形』国際日本文化研究センター蔵
12枚の組物の見本帳
行為の後の客と遊女の絵など
『誉おのこ』国際日本文化研究センター蔵
10枚の組物で各図に狂歌の恋歌が書かれている
男は嫉妬する遊女をなだめ、遊女の性技に夢中になる男の絵
年季明けが近い遊女と結婚を約束した情夫のピロートークの絵など
『喜能会之故真通』国際日本文化研究センター蔵
相手に敬意を示すありんす言葉を使う教養のある高級遊女の絵など
2匹の蛸と交わる女
『万福和合神』国際日本文化研究センター蔵
廻し部屋で屏風を隔てて情交する二組のカップルの絵
客と遊女の肛交の絵など。
喜多川歌麿
江戸時代後期に大活躍。
20代から浮世絵師となる。美人画の名作を多数手がける。
空摺、毛割、雲母摺の新しい印刷技術を取り入れる。
『美人大首絵』 プーシキン美術館蔵
役者の大首絵をヒントに作りヒット作
「歌麿の白」艶かしい肌色
『願ひの糸ぐち』国際日本文化研究センター蔵
13図の組物 描線は流麗でコントラストが際立ち美しい 着物、小道具、髪型をしっかり描き分けされている。
金持ち放蕩息子と手玉に取る遊女の絵
抱き合い崩れ落ちそうな姿勢で情交する遊女と間夫の絵など。
『青楼絵抄年中行事』国立国会図書館蔵
張見世(遊女たちが顔見せする部屋)の絵など。
『艶本常陸帯』国際日本文化研究センター蔵
客と遊女の情交を禿(かむろ・江戸時代の遊廓に住む童女)がのぞいている絵など。
菱川師宣
『小むらさき』個人蔵
『作品名不明』メトロポリタン美術館蔵
陰間と遊女のいちゃつきの絵など。
『若衆遊伽羅之枕』国際日本文化研究センター蔵
陰間を抱きしめる女性の絵など。
勝川春章
『会本色好乃人式』国際日本文化研究センター蔵
茶屋の男と振袖新造(まだ水揚げの済まない見習い女郎)と交わっている絵
花魁の豪華な寝室で交わる裕福な客と花魁の絵
船饅頭(江戸時代に江戸の海辺で小舟で売春した私娼)と屋根付きの船で交わる客の絵など。
『好色図会十二候』国際日本文化研究センター蔵
男女の色事を12の季節ごとに描かれている。
『青楼美人合姿鏡』国立国会図書館蔵
多色摺で描かれた錦絵本。
遊女の暮らしぶりがわかる、投扇興をして遊ぶ遊女の絵など。
鳥居清長
天明期に活躍した浮世絵師
特に堂々たる八頭身の美人画で、今日世界的に高く評価されている。
『色道十二番』国際日本文化研究センター蔵
遊女にばれないように情交する客と振袖新造の絵
売春を禁じられている芸者と交わる客の絵など。
『時籹十二鑑』国際日本文化研究センター蔵
花魁と客の情交シーンなど。
鈴木春信
多色摺りの手法で錦絵を作り上げた。江戸中期、明和年間に活躍。
絵の中で犬や小人が情交を眺めるシリーズを作る。
『雪中相合傘』大英博物館所蔵
『風流艶色真似えもん』国際日本文化研究センター蔵
小人の真似えもんが他人の情事をのぞいてまわるシリーズ
床入りを遂げた絵など
歌川豊国
江戸時代後期から明治時代に浮世絵界で一大勢力を持つ歌川派に多大な功績を残した。スタイリッシュな画風で髪の毛の表現が美しい。
『逢世雁之声』 国際日本文化研究センター蔵
吉原でのまぐわい
御簾紙で客の陰茎を拭きながら甘い言葉をかける遊女
遊女の股に彫り物をする彫師と遊女の絵など。
『絵本開中鏡』国際日本文化研究センター蔵
タブーとされた楼主と遊女との恋を描いた絵
遊女と客の心中の絵。
新造(禿が15歳になると新造)の水揚げ(処女喪失)の儀の絵など。
『東海道名所風景 三嶋』国立国会図書館蔵
鏡に向かい身支度を整える遊女たちの絵など。
渓斎英泉
『夢多満佳話』国際日本文化研究センター蔵
切れ長の目を描く特徴。
もと下級武士で、遊郭の経営していた。
春画に様々な体位を描いている。
ゴッホが模写をしている。
日本で初めてベロ藍(ヨーロッパから輸入された青色の合成顔料)を使用し藍摺絵を制作した。
『万寿嘉々見』メトロポリタン美術館蔵
全3冊 様々な遊郭が舞台
『春野薄雪』国際日本文化研究センター蔵
文学的な主題がモチーフ
『艶本 春情富士乃雪』
遊女の大首絵で当時流行の化粧、笹色紅が描かれている
『古能手佳史話』国際日本文化研究センター蔵
客との情交を終えた遊女の絵など。
『契情道中双六』国際日本文化研究センター蔵
三味線を弾く遊女の絵など。
『絵本美多礼嘉見』国際日本文化研究センター蔵
客の陰茎を掴む遊女の絵など。
歌川国芳
幕末に人気の絵師
『華古与見』国際日本文化研究センター蔵
繊細な書き込みで濃厚な色彩。
『逢悦弥誠』国際日本文化研究センター蔵
目力のある遊女の絵など。
富岡永洗
明治年間には特に艶やかな美人画で評判をとった。小林永濯の門人。通称は秀太郎。藻斎と号す。明治期の浮世絵師では珍しく春画なども手がけている。
『八雲の契り』国際日本文化研究センター蔵
歌川国貞
江戸時代後期を代表する人気絵師。
『花鳥余情吾妻源氏』国際日本文化研究センター蔵
男女のエクスタシーの絵
背向位の遊女と交わる男の絵など。
『正写相生源氏』国際日本文化研究センター蔵
足利義満も遊女に一人の男として扱われる絵
遊女二人と客一人で二輪車を楽しむ絵など。
『風俗三国志』国際日本文化研究センター蔵
男女の契りを一騎打ちになぞらえた
宴会 遊女屋で働く者たちに送る「総花」(祝儀)を出す準備の絵
開店前の女郎部屋の風景の絵など。
『吾妻源氏』国際日本文化研究センター蔵
髪や陰毛を細かく描写している、当時最高技術を持った摺師、彫師の技が際立つ。
『艶紫娯拾余帖』国際日本文化研究センター蔵
床入りせずに遊女に迫る男の絵。
客が遊女の陰部を見て楽しみながら交わる絵など。
『浜の真砂子』国際日本文化研究センター蔵
客を手玉にとる遊女の絵など。
『三体志』国際日本文化研究センター蔵
大事な客と会うために今の客を気持ち良く満足させる絵
客に射精をとどまらせる遊女の絵など。
『春色恋の手料理』国際日本文化研究センター蔵
鳥文斎栄之
元旗本の浮世絵師。
『華の一興笑』国際日本文化研究センター蔵
仏教界で女性との性交渉が禁じられていたため陰間(男娼)と交わる僧侶の絵など。
10枚組の組物
淡い色調と涼しげな表情で情交する男と遊女の絵など。
菊川英山
江戸の絵師
『絵合錦街抄』国際日本文化研究センター蔵
色鮮やかな着物で情交する客と遊女の絵
高い教養持つ遊女と武士の交わる絵
名器の遊女と交わる客の絵
交わりながら、夫婦になるのを楽しみにしていると遊女に話す情夫の絵
遊女も嗜んだ生け花のある部屋での情交の絵など。
蔦屋重三郎
浮世絵は絵師・彫師・摺師の共同作業で生まれる芸術。その企画、制作、販売を総合的に担当した。
葛飾北斎、喜多川歌麿、東州斎写楽を見出した。
国際日本文化研究センター
国際日本文化研究センターの艶本資料データベースから様々の春画を鑑賞することができます。
こちらから様々な作品を鑑賞することが出来ます。
まとめ
一般的な浮世絵と比べて、春画は流通数が限られているため、 1億円以上の物から豆判だと1万円以下のものもあるといいます。
コンパクトなサイズでも、繊細な絵柄や彫りや摺りの技巧が見事です
春画から遊郭の様子や、日本の庶民文化、江戸時代のエロティシズムがなどがわかります。
春画にはたくさんの作者が存在し、期待以上の価格で買取されるものも少なくありません。
菱川師宣、勝川春章、鳥居清長、鈴木春信
喜多川歌麿、歌川豊国、葛飾北斎、渓斎英泉
歌川国芳、富岡永洗、歌川国貞、鳥文斎栄之
菊川英山、これら春画を描いた有名な絵師たち と彫師、摺師そして蔦屋重三郎のような版元と共同作業で春画は作られていました。
日本絵画についてはこちら。
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